[ムービー]「イエスタデイ」英国愛

ある夜、世界規模で12秒の大停電が起きる。その時に交通事故にあった30代の売れないミュージシャンのジャック(ヒメーシュ・パテル)は昏睡(こんすい)から目覚めた後、世界からビートルズが消えていることに気づく。

脚本は「ノッティングヒルの恋人」「アバウト・タイム」のリチャード・カーティス。彼は「もしも……」という人生の予期せぬ変換をファンタジックに綴(つづ)る達人。対して監督ダニー・ボイルは「トレインスポッティング」や「スラムドッグ$ミリオネア」など、どん詰まりの人生を変える選択をシビアに描いてきた。

共に1990年代、イギリス映画の潮流を変えた2人。水と油に思える個性を今回結び付けるのはビートルズ。ジャックは現状を変えるべく、おそらく世界で自分だけが記憶を留(とど)めるビートルズの曲を自作として発表する。ところが、当初、世間から見向きもされない。

盗作というモチーフをつい許しそうになるのは、ビートルズの曲が世に埋もれていいはずがないという観客の感情を逆手に取るから。歌詞の内容を理解するため、ジャックがリバプールで「エリナー・リグビー」や「ペニーレイン」にまつわる場所を確認する行動はビートルズファンの心をくすぐる描写だろう。

ただ、2人の匠(たくみ)の眼差(まなざ)しはスターを作り上げるアメリカのエンタメ界への違和感により強く注がれる。育った土地、イギリスにこだわるミュージシャンのエド・シーランや俳優のロバート・カーライル(クレジットなしでの出演に要注目)の起用も含め、これは迷えるイギリス人への地元賛歌のラブレターである。

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